また、下図に見られるように、日本の2000年に輸出を開始した企業と輸出を開始しなかった企業の労働生産性の変化を示しているが、輸出を開始する以前の2000 年度においてすでに輸出開始企業は輸出非開始企業よりも平均的に生産性が高く、その格差は年々拡大している。
ストルパー=サミュエルソン定理 (Stolper and Samuelson, 1941) によると貿易開始によって先進国では高技能労働者の賃金が上昇し、低技能労働者の賃金が低下する。それによって、両者の賃金格差は拡大することになる。
一方で、途上国では、豊富な低技能労働者の賃金が上昇し、高技能労働者の賃金との格差が縮小すると考えられてきたが、1990年代の先進国のみならず、中国など途上国でも不平等が拡大していることが明らかになった (Goldberg and Pavcnik, 2007; Harrison et al., 2011)。
日本はアジアの中で真っ先に工業化に成功した。
工業化こそが経済成長の原動力であった。工業には無限の拡張可能性が存在し、生産の成長性も高い。そればかりではなく技術進歩が伸びやすく、それが視覚可能であるがゆえに、国民の期待も大きいのである。NIESなどが日本に続いて発展していったが、東南アジアへと拡大できたか?と言えば、停滞したりオランダ病になる国も出て必ずしも正攻法とは言えなくなっている。
さらに、これまではサービス業には技術進歩が期待できなかったが、1990年代からのIT産業革命によって、工業化が進まない地域、例えばインドやフィリピンにも経済発展の可能性が孕む傾向が見られるようになっている。つまり、雁行形態とは異なった経済発展が今後、アジア・アフリカ地域に押し寄せる可能性も大いに考えられるのである。
この新しい成長パターンが産まれているのである。
○従来の経済発展→雁行形態型
○現在の経済発展→例えば、「いきなり、IT化」
出典元:経済産業省『通商白書』2016年(http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2016/pdf/2016_gaiyou.pdf)
堺屋太一『組織の盛衰』(1996年)の言葉を引用すると、石炭産業や帝国海軍に見られたような「成功体験の埋没」、つまり現在では高度経済成長を体現した世代はどうしてもその過去の成功体験から離脱できず、時代遅れを加速させ、組織も腐敗させてしまうこと。それほど自己のプレゼンスを時代に適合させることが非常に難しいのである。